五味司法書士事務所
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相続問題
相続問題
相続・贈与・遺言は様々な手続を行う必要があります。
遺言書


わが国の相続法では,遺言の内容が優先される遺言相続主義を採用しており,法定相続分の規定等は,無遺言の場合の補充的規定にすぎないものとされています。遺言者の最終意思を尊重する為です。ただし,遺言をもってなしうる法律行為は,民法上10種類に限られており,それ以外のことを定めても,相続人間に法的効果が発生するものではなく,守るか守らないかは道徳上の問題となります。
遺言書には,自筆証書・公正証書・秘密証書の3種類がありそれぞれの方式・特性は以下の表のようになります。


種類 方式 メリット デメリット


自筆証書
遺言者が,その全文,日付及び氏名を自書し押印する。 最も簡単に作成できる。
費用が殆どかからない。
遺言の存在を秘密にできる。 紛失・偽造・変造の危険がある。
家庭裁判所の検認が必要。
相続人に発見されないことがある。
方式違背や内容不明瞭で効力が争われる


公正証書
証人2人以上の立会いのもと,遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授し作成する 紛失・偽造・変造の危険がない。
検認が必要ない。
公証人が関与する為,効力が問題となることが少ない。 それなりに費用がかかる。
証人・公証人に内容が知られる。
内容変更を躊躇ってしまう。


秘密証書
遺言者が,遺言書に署名押印,封印し,公証人及び証人2人以上の立会いの元,提出する。 内容を秘密にできる。
遺言者の署名押印があれば,本文はワープロ・代書でもよい。 手続きが面倒。
実際に利用されることは殆どない。

従来は遺言書を作成することは,余り無かったが,昨今は社会意識の変化などから,遺言書を作成することが多くなっている。どの種類による遺言書を作成すべきか悩むところだが,後日の紛争をできるかぎり防ぐ為には,公正証書で作成するのが望ましい。公正証書遺言は,紛失・偽造・変造の危険がなく,公証人が関与する為,効力が問題となることも少なく,不動産登記を申請する際に,検認の手続きが必要なく,すぐ登記ができます。多少費用がかかっても公正証書で作成すべきでしょう。ただし,公正証書が万能という訳ではなく,民法963条では「遺言者は,遺言をする時においてその能力を有しなければならない」と規定されており,行為能力は必要ありませんが,遺言の当時,意思能力が備わっている必要があります。公証人は医者ではありませんので,後日,遺言当時の意思能力を争点する遺言無効確認訴訟(特に死亡直前の遺言)が提起される場合があり,現に最近は多いです。意思能力が争点とならない様できる限り元気な内に作成してください。また,遺言書の内容に特定の相続人・受遺者の意思が介在してるとして訴訟が提起される場合もあります。


相続の承認・放棄
相続が開始すると,相続人は自己のために相続の開始があったことを知った時から3箇月以内に相続について,単純承認・限定承認・放棄の何れかを選択することになります。それぞれを説明すると以下の通りになります。


単純承認
単純承認については,特に方式はありません。熟慮期間内に限定承認・放棄をしないか,民法921条1号乃至3号に定める単純承認事由に該当する事実があれば,単純承認をしたものと看做され,無限に被相続人の権利義務を承継します。単純承認と放棄に関する問題として,熟慮期間経過後に債権者から相続人に請求が来て,消極財産の存在をしった時に相続放棄ができるのか?という問題があります。この件は「自己のために相続の開始があったことを知った時」の解釈が重要となります。最高裁は「相続人が相続開始の原因たる事実の発生を知り,かつそのために自己が相続人となったことを覚知した時を原則としつつ,3箇月以内に限定承認又は放棄をしなかったのが,相続財産が全く存在しないと信じた為であり,かつ,このように信じるついて相当な理由がある場合には,熟慮期間は,相続人が相続財産の全部若しくは一部の存在を認識した時又は通常これを認識しうべかりし時から起算するのが相当である(最判昭和59・4・27民集38巻6号698頁)」と判示し,特段の事情があれば,熟慮期間の始期は財産(通常は負債であろう。)の存在を知った時からとしました。思うに被相続人が遺した負債から相続人を解放するのが相続放棄制度の本旨といえることから,相続債権者と相続人の利益を比較衡量した際に相続人の保護に重きを置くのは当然でしょう。ただし,相続人は財産調査をしなくてもよいという意味ではありませんので,自己の懈怠で熟慮期間が経過し単純承認をすることになった場合は,放棄できない可能性もあります。


限定承認
限定承認とは,相続人によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務及び遺贈を弁済すべきことを留保して,相続の承認をすることです。簡単に述べると相続で得た積極財産の範囲内で消極財産(負債)を弁済すればよいので,単純承認のように相続人固有の財産で債務を返済する必要はありません。ただし,限定承認は共同相続人がいる場合はその全員でしなければならず,相続財産の目録を作成して家庭裁判所に提出しなければならない等,手続きが非常に煩雑で,実際にはあまり利用されていません。ちなみに平成17年度では全国で995件でした。相続放棄
相続放棄をする動機としては,負債が多い,家業を継ぐ相続人に財産を集中させる為等が考えられますが,一般的には積極財産より消極財産が多い,つまり債務超過時に相続放棄を検討するものです。手続きとしては,専門家に頼む場合もありますが,家庭裁判所に行けば,申立て用紙があり記入の仕方,添付書類等,教えてくれますのでわざわざお金を払ってまで専門家に頼む必要は少ないと思います。相続放棄をする際に留意する点としては,放棄の申述前に法定単純承認事由に該当する法律・事実行為をしないことでしょう。(ただし,民法921条1号又は3号に定める単純承認事由があっても,よほどのことがない限り相続放棄は受理されると思います。争いになると考えられる場面は,債権者から請求が来た時,相続放棄の申述受理を抗弁として提出し,その再抗弁として法定単純承認事由が主張される場合でしょう。)民法921条1号では相続人が相続財産の全部又は一部を処分した時は単純承認をしたものと看做すと規定されています。法律行為・事実行為は問いません。この「処分」の意義ですが,一般的には遺産の経済的価値を減少させる行為ということができます。ですから経済的交換価値の無い物を形見分けで貰っても処分とは言えないでしょう。なお,相続放棄をする際に気をつけるべきことは第一相続人が相続放棄をすると次順位相続人(まずは親,直系尊属がすべて他界している場合は兄弟姉妹。)が相続人となりますので,債権者は次順位相続人に請求することになります。特に負債が多い為に相続放棄をする際は必ず,次順位相続人がいるかどうかを確認し,確認できた場合は放棄する旨を伝え,次順位相続人にも放棄する様に促すべきでしょう。(もちろん次順位相続人が相続債権者に弁済する意思があるなら放棄はしなくても結構です。)


遺産分割
被相続人の財相続の産である権利義務は,開始の時から当然相続人に承継されるが,相続人が数人あるときは,その相続財産は共同相続人の共有となる。この共有財産である遺産を共同相続人間に分配することを遺産分割と言います。遺産分割の基準としては,民法906条が「遺産の分割は遺産に属する物又は権利の種類及び性質,各相続人の年齢,職業,心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする。」と定めておりますが,この規定はあくまでも訓示規定とされ,当事者の自由意志に基づく任意の合意がある限り,この基準に従わないからといって,分割の協議が無効となることはありません。


特別受益
被相続人から遺贈又は生前贈与等を受けた相続人がいる場合,その贈与等を無視して,遺産の分配を行うことは相続人間の公平という観点から妥当とはいえない。なぜなら生前贈与等は相続財産の前渡しと見ることができ,これを考慮しないで相続分を算定すると贈与等を受けた者が,二重に利益を受けることになるかである。この為,民法では特別受益という規定を設け,相続人間の実質的公平を図っている。つまり,遺産分割に際し,特別受益者がいる場合,各共同相続人の相続分は,被相続人が相続開始の時に有していた財産の価額に,特別受益財産の価額(相続開始時の価額に計算しなおす)を加算して(これを「持戻し」という。)相続財産とみなし(これを「みなし相続財産」という。),法定相続分率又は指定相続分率を乗じて,各共同相続人の取得すべき一応の相続分(これを「一応の相続分」という。)を算出し,特別受益者である相続人については,特別受益の額を控除して,その者の相続分(これを「具体的相続分」という。)を算定し,この具体的相続分に沿って遺産の分配を行うことになる。




特別受益財産の範囲持戻しの対象となる財産は遺贈と,婚姻若しくは養子縁組のため,若しくは生計の資本としての贈与である。ここで判例に現れた特別受益財産を簡単にではあるが以下の通りとなります。


贈与
贈与に関しては,当該贈与が相続財産の前渡しと見られる贈与であるか否かを基準にしながら相続人間の公平を考慮して判断されるものであり,被相続人の生前の資産,収入,家庭状況に照らして総合的に決定されるので事案によって特別受益性は異なる。


遺贈
その目的を問わず,全て特別受益財産として持戻しの対象となる。


婚姻もしくは養子縁組のための費用
持参金その他の持参財産のほか,被相続人から特にしてもらった支度の費用が典型である。ただし,金額が比較的少額である場合は相続分の前渡しとは言いがたいので特別受益にはあたらない事が多い。


結納金・挙式費用
学説上争いがあるが,結納金については,相続分の前渡しと見られるほどの金額でない場合が多いことから,原則,特別受益に当たらないというのが有力。挙式費用についても同様。親の社交上の出費である性質も強くまた愛情の現われでもある。


高等教育費用
(大学以上) 原則,特別受益となる。ただし,本人の学力及び被相続人の生前の資産収入や社会的地位から,その程度の教育をするのが普通である場合には,親の当然なすべき扶養義務の範囲内にあるものとして特別受益には該当しない。


生命保険金
学説・下級審判例ともに鋭い対立があったが,平成16・10・29の最高裁判決にて特別受益性について原則,否定する。


死亡退職金等の遺族給付
学説の多くは特別受益性を肯定。ただし,生命保険金について,特別受益性が原則否定されたことから,死亡退職金等も特別受益に当たらないと思われる。


寄与分
共同相続人間の中で,被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付,被相続人の療養監護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者がいる場合,これらの者の寄与を考慮しないで,遺産分割をすることは衡平の精神に反します。そこで民法では,寄与分の制度を設け,寄与の程度に応じて具体的相続分を修正することにより共同相続人間の実質的衡平を図っています。昨今では,高齢化社会の進展に伴い,兄弟間で親の介護の有無につき寄与分が主張されることが多いです。まず寄与行為といえるかどうかの原則論ですが,無償,もしくはこれに準ずる必要があります。(相当の対価を貰った場合は決済済みとして寄与とは言えない。)また特別の寄与と呼べるのは,当該身分関係において通常期待される程度を超える貢献が必要となりますので,夫婦間の協力扶助義務,直系血族及び兄弟姉妹の扶養義務,直系血族及び同居の親族の相互扶け合い義務の範囲内と思われるものは,特別の寄与とはいえません。また,特別の寄与と財産の維持又は増加があったことの因果関係が必要です。なお,特別の寄与にあたるか否かは,当該行為の専従性,継続性などの点が考慮されて判断されることになります。ここで判例・学説に現れた寄与の類型,態様の一例を紹介します。


事業従事型
被相続人の営む事業(農業・工業・商業の別を問わない)に対して,無報酬あるいはそれに近い状態で従事し,労務を提供して,相続財産の維持又は増加に寄与するタイプ。特別の寄与にあたるかどうかは,第三者を雇用した場合の給与との差,従業期間の長短,専従性が認められるか否か,当該身分関係等総合的に検討される。


療養看護型
被相続人の療養看護を行い,医療費や看護費用の支出を避けることによって相続財産の維持に寄与するタイプ。相続人やその他の親族が療養看護をした場合は,療養看護の必要性,身分関係,従事期間,専従性が検討される。計算式としては以下の通りとなる。
寄与分類=付添婦の日当額×療養看護日数×裁量的割合
相続人が実際に療養看護した場合
第三者に療養看護をさせ費用を負担した場合
寄与分類=費用負担額


遺産分割の方法
遺産分割協議は,共同相続人全員の合意によって,遺産を分配する手続きであり,一般的には,相続人全員が一同に会して話し合う方法が採られるが,合意形成の手段は特に法定されている訳ではなく,電話や手紙を使って協議をすることも可能であり,協議書の持ち回り方式でも問題はない。この段階で協議が整えば良いが,協議が整わないもしくは協議ができない場合は,裁判所へ調停又は審判を申立てることになり,(審判を申立てた場合,通常職権で調停に付される)原則共同相続人全員が期日に出頭することになります。実際の遺産分割では,現物分割・代償分割・換価分割の方法が採られますが,分割の方法としては原則,現物分割となり,その次に代償分割,最後に換価分割となります。現物分割とは,甲不動産はA,乙不動産はBが取得する等が一般的でしょう。代償分割はAが不動産を取得する代わりにBに持分相当額の金銭を支払うなどの方法となりますが,原則,現物分割となりますので特別の事由(現物分割ができない,できたとしても著しく価値が毀損する,代償債務を負担する資力がある等)がある場合に代償分割をすることになります。最後に現物分割,代償分割もできない時に換価分割となりますが,これは,裁判所が競売にかけて,その代金を具体的相続分に従って分配することになります。


遺留分
本来,被相続人は自分の財産を自由に処分することが可能であり,全財産を第三者に贈与・遺贈することができる。ただし,相続制度が遺族の生活保障及び潜在的持分の清算という要素がある面を考慮すると,被相続人に無尽蔵に財産処分を認めると,遺族の生活保障等を脅かす場合がある。そこで,被相続人の財産処分の自由と一定の相続人の保護との調和を図る為,相続財産の一定割合を一定の相続人に留保する方法として遺留分制度がある。なお民法では,被相続人がなし得る行為につき「遺留分に関する規定に違反することができない」と定められている条文があるが,これは遺留分の規定に違反する行為は全て無効になるという趣旨ではなく,遺留分減殺請求があった場合に,遺留分の範囲内で失効するという意味である。


遺留分権利者及び割合
遺留分権利者は兄弟姉妹以外の相続人。つまり,配偶者,子,直系尊属となり,遺留分割合は直系尊属のみが相続人である場合は,被相続人の財産の三分の一となり,それ以外の場合は二分の一となる。これに各人の法定相続分をかけると各人の遺留分割合となる。

遺留分の算定方法
各人の具体的な遺留分額の算定方法は,“鐐蠡蛙佑相続開始時に有していた全体の価額にその贈与(原則1年以内のもの)した財産の価額及を加算し,△修海ら債務の全額を控除して遺留分算定の基礎となる財産額を確定し,それに民法1028条に基づく遺留分割合を乗じて総体的遺留分を算定し,い気蕕剖ζ荏蠡蛙佑いる場合は各人の法定相続分を乗じテ段娘益者がいる場合は特別受益の価額を控除して算定される個別的遺留分よりε該遺留分権利者が相続によって得た財産の額を控除し同人が負担すべき相続債務の額を加算して算定するものとされています。(最判平成8・11・26民集50巻10号2747頁)


遺留分減殺請求権の消滅時効
遺留分減殺請求権は,遺留分権利者が,相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から,1年間これを行わないとき若しくは,相続開始の時から10年を経過したときに,時効によって消滅します。この減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時」の解釈につき最高裁は「単に贈与又は遺贈があったことを知っただけでは足りず,認識しうることを知ったことを要する」としています(最判昭和57・11・12民集36巻11号2193頁)なお減殺請求の方法ですが,必ずしも訴えによることを要せず,相手方に対する意思表示によってなせば足りる(最判41・7・14民集20巻6号1183頁)もし実際に減殺請求をするなら,事後の立証の為,必ず配達証明書付内容証明郵便をもって行使すべきでしょう。
 
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